後々のトラブルの種を残さない示談書作成のポイント
示談とは加害者側・被害者側の当事者間で紛争や損害賠償の内容について話し合い、合意(解決)に至ることです。
被害者の処罰感情が量刑に影響を与えるような事件では、示談成立は不起訴処分の獲得や刑罰を軽くすることにつながります。
示談書の内容によっては、被害届の取り下げと同様の効果を持たせることもできます。
示談の際には法律的に有効な示談書を作成することになりますが、その内容に不備があったりすると、後々のトラブルに発展する可能性を残すことになります。
依頼者の方からご自身で作成した示談書を見せていただくと、内容に不備があり、問題が残ってしまう可能性の高いものがほとんどでした。
この記事では、後々のトラブルの種を残さないための示談書作成の大切なポイントを解説します。
当事者間の約束に漏れがないかどうかを詳細にチェック
示談を成立させるためには、法律的に有効な示談書を作成して、加害者側・被害者側の双方が合意したことを明らかに示す内容にしなければなりません。
たとえば約束の内容が一部抜けていたり、言葉遣いが不十分だったりすると、示談書の内容に法律的に有効な効果を持たせることができず、後々こういう受け取り方もできるとなってトラブルに発展する危険性があります。
10年以上刑事事件を中心に扱う中で数多くの示談書を作成してきて、後々トラブルが起こったことはありませんが、依頼者の方がご自身で作成された示談書を見せていただくと、たいてい問題点になりそうな箇所が見つかりました。
不起訴処分を得るために重要な手段となる示談書はくれぐれも内容に不備のないものを作成していかなければなりません。
「清算条項」が抜けていると追加請求を受けるおそれが
示談書の内容で見落としてはいけないポイントのひとつが「清算条項」です。
示談書に記載された内容以外の請求を行わないことを確認する条項になります。
清算条項を正確に記載しておかないと、場合によっては相手側がもっと払ってもらえると考えて、後から追加で請求してくるおそれがあるので注意が必要です。
また、示談交渉では示談金をどの程度の金額で提示するかという点も重要になります。
示談金には、必ずしもその基準でなければいけないというものではないものの、一応の相場のようなものありますので、まずはその相場を把握した上で具体的な金額を提示していくことになります。
被害者側も示談金の相場を調べていることが多く、相場に比べてあまり低い金額提示をしてしまうと示談決裂の原因になってしまいかねません。
金額設定はとても繊細な交渉材料になります。
加害者側の要望も可能な範囲で取り入れることが大切です
示談書の内容というと損害賠償や示談金など、加害者側が被害者側に対して提示する条件にばかり目が行きますが、加害者側の要望もできる限り取り入れられるように配慮しています。
もちろん加害者側としてあまり強く求めることは難しいのですが、示談交渉の中で丁寧に説明を重ねながら条件を詰めていきます。
加害者側の要望として多いのは、事件のことを口外しないでほしいという内容です。
被害者側としても口外するつもりはない場合でも、どうしてこちらが義務を負わなければならないのかと不満を持たれてしまうこともありますが、事件のことや示談内容について口外しないということは、第一次的には被害者の二次被害を防ぐことが目的であります。
これらを説明し、丁寧に交渉を重ねながら了承してもらえるように努めています。
また、最近は事件現場で被害者の方がスマホで加害者が取り押さえられる様子などを動画を撮影しているケースもあり、その場合、SNSにアップされてしまう可能性もあります。
私が担当したケースでは被害者の方にそのような意思はなかったのですが、どうしても不安であるということでお願いして、動画を消すことを約束していただきました。
示談書作成に弁護士の経験の差は現れるもの?
弁護士であればたいていの場合、示談書は問題なく作成できると思いますが、加害者側の要望である口外禁止の条項が抜けていたり、入れておきたくない内容が入っているというケースは見聞きしたことがあります。
また、加害者側の要望として記載した内容が、あらためて考えてみると加害者側にも義務を負わせてしまう内容になってしまうこともあります。
内容をよく吟味しておかないと、後々に思わぬ影響が現れてしまうことになりかねません。
そういう箇所には細心の注意を払って確認するようにしています。
一方で、細かく何でも約束ごととして記載しておけば良いというものでもありません。
あえて示談書に記載しなくても良いような事柄もあります。
そうした方が今後、おたがいに柔軟な対応ができると判断して、示談書の内容から外しておけるかどうかは、示談書作成の経験の差が現れる部分かもしれません。
示談書作成では細かな点にも注意を払っておくことが必要です
示談書の作成には後々のトラブルの種を残さないことに加えて、口外禁止など加害者の方の要望をできる限り取り入れたり、あえて記載しないでおいた方が良い内容は外しておくなど、微妙なさじ加減が要求されます。
示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、そうした気づきにくい点にも注意を払いながら示談書を作成していってくれるはずです。